前回、腎臓は
・老廃物をこし取る
・必要なものを再吸収する
・血圧や血液の量を調整する
という大切な働きをしている話をしました。
今回は高齢のネコに多い慢性腎不全です。
腎不全とは腎臓の働きが悪くなった事で、通常は両方の腎臓の4分の3が働かなくなった時に起こります。
慢性腎不全は、数ヶ月~数年にわたってゆっくりと腎臓の働きが悪くなって、腎不全を発症したものです。
病因
腎臓の炎症や薬物等、いろいろな原因で起こると言われていますが、原因をはっきりさせることは通常難しいです。高齢(6歳以上)で多くみられるので、老化も影響していると思います。
働きが悪くなった腎臓が再び良くなることは、ほとんどありません。
ところで、ネコの腎臓は私たちヒトやイヌの腎臓と比べると、
水分の再吸収能力が非常に高くなっているという特徴があります。
ネコの祖先は飲み水が少ない砂漠に住んでいたと言われています。そのため水分を失うことは命に関わる重大な事だったのでしょう。
本来、ネコは獲物の動物を捕まえ、獲物から栄養分と同時に水分も補給してきました。そしてその水分をできるだけ失わないように、腎臓の再吸収能力を高めたと考えられています。同じ理由で缶詰のご飯やウェットフードを食べるネコは水を全く飲まない事もあります。
言い換えると、ネコの腎臓は他の動物に比べて、水分を吸収するところを酷使していると言えます。
ネコの腎不全は
再吸収が上手く出来なくなることから始まり、それに続く様々な症状が出てきます。
ネコのおしっこは濃くて臭いですよね?おしっこの色・匂いが薄くなって量が増えると要注意です。
症状
ネコの腎不全とヒトの腎不全は最初に壊れる場所が違います。そのため、ヒトの腎不全で見られるむくみや尿が出にくくなる症状は初期ではあまりみられません。
脱水症状と栄養不良
再吸収を行う尿細管が壊れてくると
尿の濃縮ができなくなり、体に必要な水分や栄養分がどんどん尿として失われていきます。そのために脱水症状と栄養不足が起こります。
脱水症状になると
よく水を飲む、
便秘になる
栄養不良では
体重が落ちる、
筋肉が衰える、といった症状がみられます。
便秘と思って来院されて、腎不全の診断をすると驚かれる飼い主さんは多いです。
高血圧と貧血
腎不全が進行すると、血圧や血液を調節するところも壊れてきます。
腎不全で高血圧がおこります。腎臓が働かなくなると命に関わるので、体は壊れた腎臓にもっと働くよう血液を集めます。そのために他の血管を細くします。すると全身の血圧が上がります。
ヒトでもそうですが、高血圧が続くと血管が破裂することがあります。ネコでは目の網膜にある血管が破れて視力が衰えてしまいます。
明るいところでも
瞳孔が開いたままになっていると要注意です。
また、腎臓は骨髄に赤血球を作らせますが、腎不全ではこの働きが悪くなり
貧血が起こります。
尿毒症
更に悪くなると、血液の老廃物を濾しとるところまでも機能しなくなります。すると、本来尿で出ていくはずの毒性物質が体にたまってくるので
吐き気や
ケイレン症状といった尿毒症が現れます。
長くなりましたので、治療については次回お話しします。