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てぃーだブログ › 動物と暮らす・こにし動物病院 › 病気の説明 › イヌの乳腺腫瘍

2011年07月21日

イヌの乳腺腫瘍

今回はイヌの乳腺腫瘍のお話をします。

腫瘍とはいわゆる「しこり」や「できもの」の事で、検査で命に関わる様な悪さをするものを「悪性腫瘍」、悪さをせず、そこにあるだけの出来物を「良性腫瘍」と区別します。

癌は悪性腫瘍の中の1グループです。

検査をしないと良性か悪性か判断できないので、体のどこかにしこりがあると、検査で確定するまではひとまず「腫瘍」と診断します。

乳腺にできた「しこり」を乳腺腫瘍と呼びます。

病因
乳腺腫瘍は雌犬にできる腫瘍の半分近くを占める、とても多い腫瘍です。
6歳以上でよくみられます。
避妊手術をうけていないか、もしくは2歳以上で避妊手術を行った雌のイヌに多く発生します。

これは、
乳腺腫瘍と卵巣から出るホルモンに密接な関係がある
ことを意味しています。

イヌの乳腺腫瘍を検査すると、良性・悪性の度合いは半分半分くらいです。
ちなみにヒトとネコの乳腺腫瘍の9割以上は悪性(乳がん)です。

症状
脇の下から内股まで広がる乳腺の一部にしこりができます。
小さいものはゴマ粒位ですが、大きい物は時に赤ちゃんの頭位になり数キロの重さになります。
大きくなると皮膚が裂けて体液や血液が出てきます(潰瘍)。
外で飼育しているイヌでは潰瘍が出来るとハエウジが付くこともあります。

悪性の場合、他の乳腺やリンパ節に転移がおこります。
腫瘍はどんどん大きくなり、潰瘍がよくみられます。
肺に転移すると予後はよくありません。

診断
まず、問診で避妊手術の有無と、手術したときの年齢を確認します。
次に視診・触診で腫瘍の数や大きさ、形、色、リンパ節の腫れがないか等を確認します。
これらは良性/悪性の判定の目安になります。
また、胸部レントゲンを撮って、肺に転移がないかを調べます。
高齢のワンちゃんに多いので、全身の健康状態を把握するための血液検査や超音波検査などを行うこともあります。

治療
治療は手術による切除が基本となりますが、切除のメリットと手術のリスク、ワンちゃんの年齢や健康状態をよく考慮して決定します。
抗腫瘍剤の治療効果は低く、手術ができない場合や悪性腫瘍を摘出した後の補助療法として使用します。

悪性と思われる所見が無く、大きくなるスピードもごくゆっくりな場合は飼い主さんと相談の上、無処置で様子をみることもありますし、時期を見て切除することもあります。

腫瘍が複数ある時や潰瘍が出来ているときなど、悪性の可能性がある場合は手術を検討します。
肺の転移が見られる場合は対処療法となる事が多いです。

手術は腫瘍だけの摘出、近くの乳腺と一緒に切除、腫瘍がある側の乳腺をすべて取る方法等、数通りの方法があります。
腫瘍の性質や個数などで方法を選択します。
高齢のワンちゃんは卵巣・子宮の病気のリスクも高くなることや麻酔の危険性も上がることから、同時に避妊手術を行うこともあります。

摘出した腫瘍は病理検査で悪性/良性の判定を行い、その子の今後の治療方針・方法の選択に役立てます。

予防
先に書いたように、乳腺腫瘍と卵巣のホルモンには密接な関係があります。
避妊していないイヌでは5頭に1頭の割合でこの病気になると言われていますが、最初の発情が来る前に避妊手術を行うと3000頭に1頭の割合まで発生率下がる報告があります。

このことから、将来子供を残す予定がないワンちゃんは乳腺や卵巣・子宮の病気の予防として
最初の発情の前に避妊手術を行うことをお勧めします。
最初の発情期の後でも予防効果はありますが、その効果は発情が来るたびに低くなり、2歳を過ぎると予防効果は無くなると言われています。




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Posted by こにし動物病院・夫婦 at 18:11│Comments(0)病気の説明
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